
さかいスポーツ用品店
遊ぶことは生きること、板1枚からつながるコミュニティ
住宅街にあるサーフィンショップ、特徴や歴史を教えて下さい
サーフィンって言っても、海だけじゃなくて、山の雪の上で滑るスノーサーフィンがうちの特徴のひとつかな。板ならなんでもある、夏は海、冬は山、スケボーも置いてる。お店ができたのは、今から30年くらい前。地元育ちで、もともとは、アメリカの中古車販売もしていて、通り沿いにも店舗があったんだけどね。バブルがはじけて、売れなくなっちゃった。その当時は、サーファーがさ、スポーツって感じじゃなくて、ツードアの車に板積んでさ、帰りに六本木でディナー行けちゃうような恰好で海行くわけ、それが本当に恰好良かった。昔はこのへんにもサーフショップ6件くらいあったんだよ。でも今はもうここだけ、しかも不定休でお客さんの予約があるときしかあけてない。でも、昔からサーフィンやってる仲間もいるし、人づてにメンバーに入ってきてくれる若い子もいる。今は、お店をやってるってよりも、みんなが集まれる場を作ってる、コミュニティ作ってるって感覚かな。

オリンピックやコロナの影響はありましたか?
(五十嵐カノア選手や都筑有夢路選手の活躍を受けて)サーフィン流行るんじゃないってみんな言うんだけどね、実際はすごく一時的じゃないかな。「かっこいい~!」って憧れて始めても、まず板に立てるようになるまでにすごく時間がかかるから。オリンピックに出るような子って、そもそもすごく小さい頃からやってるからね。始めても乗れなくて、すぐやめちゃうって人がほとんど。だから流行っても、競技人口が増えないんだよね。流行るとブワっと増えるんだけど、自然が相手だから、危険も怪我も多いし、続けるのが難しいスポーツかもね。でもコロナになってから、面白い変化もあった。10年以上ブランクあるような人が久しぶりにやろうって急に店に来てくれたりして、そういう変化もあるんだなぁって。お店のグループLINEで、イベントの声がけがしにくくなったのはちょっと大変だったけど、色んな考えの人がいるから、それは仕方ないよね。

このお店の特徴を教えて下さい。
他の大きいお店に行けば、うちの店の10分の1の値段で板からブーツから一通りそろえることができる、でもうちに置いてある商品って、そういうものじゃない。この板も高いけど、工房にしたら、利益なんて僅かしかないんだよ。しっかり考えて、質の高いモノ作りをしているから、そういう価格になる。それがわかる人しか買わない。でも、そこに行かないと見えない世界があるんだよね。高いものを買えって話じゃなくてね。本質を求める子とか、やる気がある子には、自分の板貸してあげることもあるし、やり方も説明する。お客さんによっては、うちの商品勧めないこともよくあるよ、いきなりこんな最上級のもの買う必要ないから。最初はレンタルでもネット通販でも良くて、やってみて何か感じたのであれば、その時にまたうちに来てくれればいい。なんでもそうだけどさ、途方もない練習を積む苦しさとか、生きるか死ぬかの環境とか、そういうものを乗り越えた先に見える世界があるから、そこに価値を感じてくれる人たちをつなげたいし、目指す人は引っ張っていってやりたいって思ってます。そんなお店です。